全国の中古住宅は、この8年でおおむね値上がりしてきました。ニュースやSNSでも「不動産価格が上がっている」という話をよく見かけますが、では実際に値下がりした街はどれくらいあるのか、具体的な数で示した記事はあまり見当たりません。この記事では、値下がりした市区町村がどれだけ少数派なのか、そして値下がりした市区町村同士に何か共通点があるのかを、実際の成約データから確かめます。

使うのは、国土交通省の不動産情報ライブラリ(reinfolib)が公開する実際の成約価格(XIT001)をもとに、市区町村ごとに集計した8年間の中央値の変化率です。この変化率は、8年前との比較ができるだけの取引件数がそろっている市区町村についてだけ算出しています。取引件数が少なく、年によって価格が大きく振れてしまう市区町村は、そもそもこの比較の対象に含めていません。

先に結論だけ言うと、中古マンションで8年前より中央値が下がっていたのは、比較可能な217市区町村のうち3、中古戸建て・土地で下がっていたのは179市区町村のうち15でした。合わせても396市区町村中18、割合にして4.5%にとどまります。この記事では、この少数派の市区町村がどこで、どれくらい下がったのか、件数はどうだったのかを具体的に見ていきます。

この記事は「値下がりした街は買い時だ」とも「値下がりした街は避けたほうがいい」とも主張しません。値下がりという事実と、その事実の周辺にある数字(件数、価格の水準、地域の偏り)を、あるがままに示すことが目的です。売却や購入の判断は、この記事の数字だけでなく、物件ごとの個別の事情を踏まえて行うものです。

中古マンションで値下がりしたのは、217市区町村中わずか3

比較可能な217市区町村のうち、8年前より中古マンションの中央値が下がっていたのは次の3市区町村だけでした。残り214市区町村は横ばいか上昇です。

市区町村都道府県8年間の変化率直近の中央値(万円)直近1年の取引件数
名古屋市天白区愛知県-16.7%2,000万円315件
横浜市旭区神奈川県-5.9%1,600万円306件
神戸市北区兵庫県-2.3%850万円184件

3市区町村のうち下落幅が最も大きかったのは名古屋市天白区の-16.7%で、直近の取引件数は315件あります。件数が少なくて数字が振れているわけではなく、まとまった件数のうえでの下落です。横浜市旭区は-5.9%、神戸市北区は-2.3%で、下落幅は3市区町村の中でも差があります。

もう一つ気づく点として、3市区町村はいずれも「名古屋市」「横浜市」「神戸市」という政令指定都市の区であり、各市の中心部そのものではなく周辺の区です。ただし、これはわずか3件の中での共通点にすぎません。全国の政令指定都市の区がすべて同じ傾向にあるかどうかは、この3件だけからは判断できません。件数が少ない中での偶然の一致である可能性も残ります。

中古マンションの値下がりが少数派であることを確認したところで、次は中古戸建て・土地の状況を見ていきます。

中古戸建て・土地で値下がりしたのは、179市区町村中15

同じ方法で中古戸建て・土地(宅地の土地と建物で、共同住宅を除く用途)を見ると、比較可能な179市区町村のうち15市区町村で8年前より中央値が下がっていました。中古マンションの1.4%に対し、こちらは8.4%で、値下がりした市区町村の割合そのものはマンションより高くなっています。

市区町村都道府県8年間の変化率直近の中央値(万円)直近1年の取引件数
三郷市埼玉県-15.2%2,800万円76件
松山市愛媛県-15.0%1,700万円325件
知立市愛知県-11.2%3,550万円46件
太田市群馬県-9.5%1,900万円182件
佐倉市千葉県-9.1%2,000万円186件
奈良市奈良県-6.1%2,300万円262件
豊田市愛知県-5.3%3,600万円215件
鹿児島市鹿児島県-4.8%2,000万円347件
豊川市愛知県-4.0%2,400万円143件
安城市愛知県-3.8%3,850万円78件
一宮市愛知県-3.7%2,600万円175件
越谷市埼玉県-3.2%3,000万円300件
横浜市南区神奈川県-2.9%3,400万円129件
みよし市愛知県-2.7%3,600万円44件
横浜市港南区神奈川県-1.3%3,750万円152件

下落幅が最も大きいのは三郷市の-15.2%、次いで松山市の-15.0%です。この2市はどちらも下落幅が突出していますが、直近1年の取引件数を見ると三郷市が76件、松山市が325件と大きく違います。下落幅の大きさだけを見ると似た2市に見えても、その数字を支えている取引の厚みは同じではありません。

一方で下落幅が最も小さいのは横浜市港南区の-1.3%で、こちらも8年前より下がっているには違いありませんが、変化としてはごくわずかです。15市区町村と一口に言っても、下落幅には-15.2%から-1.3%まで幅があることは踏まえておく必要があります。

15市区町村の顔ぶれを都道府県別に見ると、ある特定の県への偏りが見えてきます。次の項でその内容を確認します。

15市区町村のうち6つが愛知県

上の表の都道府県を数えると、15市区町村のうち6市区町村(40%)が愛知県です。次に多いのは神奈川県と埼玉県で、それぞれ2市区町村(13.3%)にとどまります。1つの県だけで値下がり市区町村の4割を占めているのは、この記事のデータの中でもっとも目立つ偏りです。

市区町村8年間の変化率直近の中央値(万円)直近1年の取引件数
知立市-11.2%3,550万円46件
豊田市-5.3%3,600万円215件
豊川市-4.0%2,400万円143件
安城市-3.8%3,850万円78件
一宮市-3.7%2,600万円175件
みよし市-2.7%3,600万円44件

愛知県の6市区町村の下落幅を平均すると-5.1%です。これに対して、愛知県以外の9市区町村の下落幅の平均は-7.5%で、実は愛知県以外の市区町村のほうが下落幅そのものは大きくなっています。つまり愛知県は「値下がりした市区町村の数が多い」のであって、「値下がりが特に激しい」わけではありません。数の多さと下落幅の大きさは、別の話として分けて見る必要があります。

もう一つ確認しておきたいのは、愛知県の6市区町村を見ても、知立市・豊田市・安城市・みよし市のように直近の中央値が3,000万円台後半から3,800万円台にのぼる市区町村が含まれている点です。値下がりしているからといって、価格の水準そのものが低いとは限りません。次の項で、この点をもう少し詳しく見ていきます。

値下がりしていても、価格の水準自体は低くない

「価格が下がっている街」と聞くと、もともと価格の水準が低い街を思い浮かべるかもしれません。ですが、今回の15市区町村の直近の中央値を平均すると2,830万円で、最も低いのは松山市の1,700万円、最も高いのは安城市の3,850万円です。安城市は8年間で-3.8%下がってはいますが、直近の中央値は今回の15市区町村の中で最も高く、下落前の水準がもともと高かったことがうかがえます。

中古マンションの3市区町村についても同じことが言えます。名古屋市天白区は-16.7%ともっとも下落幅が大きい一方、直近の中央値は2,000万円で、3市区町村の中では最も高い水準です。逆に下落幅が最も小さい神戸市北区は、直近の中央値が850万円ともっとも低い水準になっています。3市区町村の中央値の平均は1,483万円です。

下落率(パーセンテージ)と、価格の絶対水準(万円)は、別の指標です。下落率が大きいからといって価格が安いとは限らず、逆に下落率が小さくても、もともとの価格水準が低い市区町村もあります。この記事の数字を見るときは、この2つを混同しないよう注意してください。

中古マンションと中古戸建て・土地、どちらが値下がりしやすいか

ここまでの数字を並べると、値下がりした市区町村の割合は中古マンションが1.4%、中古戸建て・土地が8.4%で、戸建て・土地のほうが値下がりした市区町村の数は多くなっています。では下落幅そのものはどうでしょうか。

値下がりした市区町村だけで見ると、中古マンション3市区町村の下落幅の平均は-8.3%、中古戸建て・土地15市区町村の下落幅の平均は-6.5%です。数のうえでは戸建て・土地のほうが値下がりした市区町村が多いのに対し、値下がりした市区町村1つあたりの下落幅は、むしろ中古マンションのほうが大きくなっています。

ただしこの比較には注意が必要です。中古マンションの平均は、わずか3件の数字をならしたものです。名古屋市天白区の-16.7%という大きな下落幅1件が、平均を大きく引き上げています。3件のうち2件(横浜市旭区-5.9%、神戸市北区-2.3%)は、むしろ戸建て・土地の平均(-6.5%)に近い水準です。件数が3しかない集団の平均は、1件の数字に結果が左右されやすいという点を踏まえて読んでください。

もう一つ、中古戸建て・土地の15市区町村は、愛知県に6市区町村と偏りがある一方で、埼玉県・神奈川県・愛媛県・群馬県・千葉県・奈良県・鹿児島県と、8つの都道府県にまたがっています。1つの県に集中しているように見えて、実際には全国のさまざまな地域から値下がりした市区町村が出ています。

取引件数から見る、値下がりの数字の重み

この記事で扱っている18市区町村は、いずれも8年前との比較ができるだけの取引件数がそろっている区分から選ばれています。とはいえ、その中でも直近1年の取引件数には幅があります。

中古マンションの3市区町村は184件から315件、合計805件です。件数が近い水準でそろっており、3市区町村とも一定の厚みのある取引に裏付けられた数字と言えます。

中古戸建て・土地の15市区町村は、最も少ないみよし市の44件から、最も多い鹿児島市の347件まで幅があり、合計は2,660件です。同じ「8年前との比較ができる区分」に含まれてはいますが、44件の市区町村と347件の市区町村とでは、1件あたりの取引が中央値に与える影響の大きさが異なります。件数が少ない市区町村の下落率は、比較的少数の取引の組み合わせによって決まっている可能性がある一方、件数が多い市区町村の下落率は、より広い母集団の中での傾向に近いと考えられます。表の中央値や変化率を見るときは、隣に添えた件数も合わせて確認してください。

このデータで分からないこと

この記事は市区町村単位の中央値の変化を扱っていますが、次のことは分かりません。

  • 値下がりした理由: 住宅供給の増減、周辺の再開発、人口動態の変化など、値下がりの背景にある具体的な理由は、この価格データだけからは特定できません。
  • 個々の物件の条件: 同じ市区町村の中でも、駅からの距離や築年数、リフォームの有無によって、実際の成約価格は変わります。この記事の数字は市区町村全体の中央値であり、個別の物件の価格を示すものではありません。
  • 値下がりが今後も続くかどうか: この記事はあくまで過去8年間の実績を示したものです。今後の価格がどう動くかを予測するものではありません。
  • 町丁目単位の違い: 同じ市区町村の中でも、町丁目によって価格の動きが異なる場合があります。この記事は市区町村全体をひとつの単位として扱っています。
  • 比較対象外の市区町村の動き: 取引件数が少なく8年前との比較ができない市区町村については、この記事には含まれていません。それらの市区町村が値上がり・値下がりのどちらの傾向にあるかは、この記事からは分かりません。
  • 建物と土地の内訳: 中古戸建て・土地の中央値は、建物付きの取引と土地のみの取引が混ざった状態での中央値です。建物の劣化と土地の価格変動を切り分けて見ることは、この集計単位ではできません。

値下がりしている市区町村であっても、それが売り時・買い時のどちらを意味するものでもありません。価格が下がっている事実と、売買の判断は別のものとして分けて考える必要があります。

自分の街の実際の成約価格を確認する

この記事で扱った18市区町村は、全国396市区町村のうちのごく一部です。この記事に出てこない市区町村がどう動いているかは、この記事だけでは分かりません。

自分の市区町村の実際の成約価格を確かめる
  1. 1お住まいの地域・都道府県を選ぶ
  2. 2市区町村を選ぶ
  3. 3築年数のおおよその範囲を選ぶ
  4. 4その条件に合う実際の成約価格を、件数つきで確認する

ウリドキナビでは、画面右下の相談窓口から、都道府県・市区町村・築年数を選ぶだけで、その条件に合う実際の成約価格を確認できます。物件種別(マンション・戸建て)を選ぶ必要はなく、両方の結果をまとめて確認できます。回答するのは推計モデルではなく、条件に合う実際の成約記録です。条件に合う取引が少ない場合は、その旨を明示したうえで参考値として示します。実際の成約価格を確認する のページからも、同じ内容を確認できます。

この記事に登場した市区町村のうち、名古屋市天白区の中古マンション相場、横浜市旭区の中古マンション相場、神戸市北区の中古マンション相場は、それぞれの市区町村の記事でより詳しい価格推移を確認できます。中古戸建て・土地についても、三郷市の中古戸建て相場、松山市の中古戸建て相場、知立市の中古戸建て相場、太田市の中古戸建て相場、佐倉市の中古戸建て相場、奈良市の中古戸建て相場、豊田市の中古戸建て相場、鹿児島市の中古戸建て相場、豊川市の中古戸建て相場、安城市の中古戸建て相場、一宮市の中古戸建て相場、越谷市の中古戸建て相場、横浜市南区の中古戸建て相場、みよし市の中古戸建て相場、横浜市港南区の中古戸建て相場の記事でも、それぞれの実際の価格推移を確認できます。

この記事のデータについて

項目内容
出典国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib) 不動産取引価格情報(XIT001)
対象期間国土交通省が公開している直近8年分の成約データ(データ更新のたびに対象期間も延びます)
対象中古マンション、中古戸建て・土地(宅地の土地と建物、共同住宅を除く用途)の実際の成約価格
集計単位市区町村ごとの中央値の8年間の変化率
母集団の条件8年前との比較ができるだけの取引件数がそろっている市区町村のみ
比較可能な市区町村数中古マンション217、中古戸建て・土地179
値下がりした市区町村数中古マンション3(1.4%)、中古戸建て・土地15(8.4%)
値下がりした市区町村の取引件数合計(直近1年)中古マンション805件、中古戸建て・土地2,660件

このデータは実際の取引にもとづいて更新します。新しい年の成約が加わった際は、同じURLのまま数字を更新します。年ごとに新しいページを作ることはしません。今回15市区町村中6市区町村が愛知県だったという結果も、データが更新されれば変わる可能性があります。

同じ出典のデータを使って、市区町村ごとの記事でも、それぞれの実際の取引にもとづいた価格の推移を公開しています。この記事で全体の少数派としての値下がりの実態をつかんだうえで、気になる市区町村があれば、その記事や上記の成約価格の確認を合わせて見ることをおすすめします。

よくある質問

値下がりした市区町村は全体のどれくらいですか
8年前との比較ができる市区町村のうち、中古マンションは217市区町村中3(1.4%)、中古戸建て・土地は179市区町村中15(8.4%)が値下がりしていました。合わせても396市区町村中18(4.5%)にとどまり、値下がりは少数派です。
値下がりした市区町村に共通点はありますか
中古戸建て・土地で値下がりした15市区町村のうち6市区町村(40%)が愛知県でした。ただし愛知県の6市区町村の下落幅の平均(-5.1%)は、愛知県以外の9市区町村の平均(-7.5%)より小さく、値下がりの数が多いことと下落幅が大きいことは別の話です。理由はこのデータだけでは特定できません。
値下がりした市区町村は価格が安いのですか
必ずしもそうではありません。値下がりした15市区町村の直近の中央値の平均は2,830万円で、安城市のように直近の中央値が3,850万円と今回の対象の中で最も高い市区町村も含まれています。下落率と価格の絶対水準は別の指標です。
この記事の数字はこれから価格が下がることを示していますか
示していません。この記事はあくまで過去8年間の実際の成約価格の変化を集計したもので、今後の価格を予測するものではありません。値下がりした市区町村を売り時・買い時のどちらとも判断していません。