中古マンションの「価格が高い街ランキング」というと、多くは中央値や平均価格をそのまま並べたものです。ただ、この総額の中央値は、専有面積の違いをそのまま含んでいます。同じ街でも、狭い部屋が多く成約すれば総額の中央値は下がり、広い部屋が多く成約すれば総額の中央値は上がります。つまり総額ランキングは「街の価格の高さ」と「その街でよく取引される部屋の広さ」が混ざった数字です。

この2つを切り分けるために使うのが、1㎡あたりの単価です。総額を専有面積で割った㎡単価は、部屋の広さの違いを取り除いたうえで、その街の土地・建物としての値ごろ感を比べる指標になります。総額では目立たなくても㎡単価では上位に来る街もあれば、逆に総額では上位でも㎡単価では順位が落ちる街もあります。

このレポートでは、国土交通省の不動産情報ライブラリ(reinfolib)が公開する実際の成約価格(XIT001)を市区町村単位で集計した価格マスから、中古マンションの㎡単価(中央値)を市区町村ごとに算出し、上位20の市区町村を並べます。対象は同じ市区町村・中古マンション全体で取引が30件以上あるマスに限り、件数が足りない市区町村は対象に含めていません。この条件を満たす市区町村は全国で570あり、その中での順位です。

あわせて、同じ市区町村を総額の中央値で順位づけた場合の順位も横に並べ、㎡単価の順位とどれだけずれるかを見ます。推計や将来予測は行わず、実際に成約した取引の中央値だけを扱います。

㎡単価が高い中古マンション、市区町村トップ20

まず、㎡単価(中央値)で並べた上位20市区町村です。「総額順位」は、同じ市区町村を総額の中央値だけで順位づけした場合の順位です。

単価順位市区町村都道府県㎡単価(中央値)総額の中央値総額順位取引件数
1港区東京都135.0万円6,900万円1位10,041件
2千代田区東京都125.0万円4,400万円11位2,718件
3渋谷区東京都120.0万円5,200万円4位6,066件
4中央区東京都117.3万円6,000万円2位8,983件
5目黒区東京都111.1万円5,300万円3位4,735件
6新宿区東京都110.0万円3,700万円22位9,434件
7文京区東京都107.3万円4,300万円16位6,200件
8品川区東京都106.7万円4,400万円12位9,133件
9豊島区東京都97.8万円2,900万円66位5,860件
10台東区東京都95.0万円3,500万円32位5,919件
11中野区東京都90.0万円3,500万円33位4,644件
12墨田区東京都88.9万円3,100万円55位6,443件
13世田谷区東京都88.3万円4,900万円5位11,047件
14江東区東京都86.2万円4,500万円10位13,382件
15杉並区東京都85.7万円3,300万円44位6,944件
16川崎市中原区神奈川県83.1万円4,700万円8位3,716件
17横浜市西区神奈川県80.5万円3,000万円62位3,416件
18大田区東京都80.0万円2,800万円74位11,401件
19北区東京都80.0万円3,400万円40位4,668件
20武蔵野市東京都80.0万円4,800万円6位1,567件

上位20はすべて東京都と神奈川県の市区町村で占められています。ただし、単価の順位と総額の順位を見比べると、同じ数字ではないことがすぐに分かります。次の項で、このずれの大きさを見ていきます。

総額の順位と、単価の順位はどれだけ違うか

表の「総額順位」の列を見ると、単価順位と大きく離れている市区町村があります。もっとも差が大きいのは豊島区で、㎡単価は全国9位ですが、総額の中央値で順位をつけると66位相当まで下がります。差は57位分です。同様に大田区は単価18位・総額74位(差56位分)、横浜市西区は単価17位・総額62位(差45位分)、墨田区は単価12位・総額55位(差43位分)と、単価では上位20に入りながら、総額の中央値だけを見ると全国の真ん中より下まで下がる市区町村が複数あります。

逆に、総額の中央値では上位に来るのに、単価では上位20の下のほうにしか入らない市区町村もあります。武蔵野市は総額6位ですが、単価では20位ぎりぎりです(差14位分)。世田谷区は総額5位・単価13位(差8位分)、川崎市中原区は総額8位・単価16位(差8位分)です。総額ランキングだけを見ていると、これらの街は「価格が高い街」の上位に来ますが、単価で見ると上位20の中では下位に位置します。

新宿区も差が大きい市区町村のひとつで、単価では6位ですが総額では22位です(差16位分)。単価は上位10に入るほど高いのに、総額の中央値だけで見ると上位20にすら入らない水準まで下がっています。

参考までに、表の中央値(総額)を㎡単価で割ると、その市区町村で成約した中古マンションのおおよその目安の広さが見えてきます。これは専有面積そのものの中央値ではなく、2つの中央値から逆算した目安にすぎませんが、順位のずれの大きさを説明する手がかりになります。単価順位が総額順位より大きく上回る豊島区・新宿区・大田区・横浜市西区・千代田区は、この目安の広さがおよそ30〜37㎡台とコンパクトな水準にとどまります。一方、総額順位が単価順位より大きく上回る武蔵野市・川崎市中原区・世田谷区は、目安の広さがおよそ55〜60㎡台とやや広めです。単価は同じくらい高くても、成約する部屋の広さが街によって違うため、総額の中央値に差が出ている可能性がある、という見方ができます。

単価そのもので見た街のランキングと、そこに面積を掛け合わせた総額のランキングとでは、こうして順位が入れ替わります。次は、上位20の中身をもう少し細かく見て、取引件数の多さや、東京都・神奈川県という地域の違いによって、どんな差があるのかを確認します。

上位20の中でも、取引件数には大きな差がある

上位20はすべて取引が30件以上あるマスから選ばれていますが、実際の取引件数(deals)は市区町村ごとにかなり違います。もっとも取引件数が多いのは江東区の13,382件、もっとも少ないのは武蔵野市の1,567件で、その差は約8.5倍です。武蔵野市の1,567件も、対象条件である30件以上を大きく上回る水準ではあります。

とくに分かりやすいのは、㎡単価がそろって80.0万円で並ぶ大田区・北区・武蔵野市(単価順位18〜20位)の3市区町村です。単価は同じでも、取引件数は大田区が11,401件、北区が4,668件、武蔵野市が1,567件と、最大で7倍以上の開きがあります。単価が同じ水準の街どうしでも、実際に取引されている件数の厚みは同じではありません。

取引件数がもっとも多いのは江東区(13,382件)、次いで大田区(11,401件)、世田谷区(11,047件)の順で、いずれも単価順位では上位20の中位から下位(14位・18位・13位)にとどまる市区町村です。逆に、単価順位が上位5位以内に入る港区・千代田区・渋谷区・中央区・目黒区の中では、取引件数がもっとも少ないのは千代田区の2,718件です。単価がもっとも高い港区でも取引件数は10,041件あり、単価の高さと取引件数の少なさが必ずしも結びつくわけではありません。

東京都と神奈川県、上位20の中の対比

上位20市区町村のうち、18市区町村が東京都、残り2市区町村(川崎市中原区・横浜市西区)が神奈川県です。この2グループを比べると、次のような違いがあります。

都道府県上位20に入った市区町村数㎡単価の平均(上位20内)取引件数の平均(上位20内)
東京都18市区町村100.2万円7,177件
神奈川県2市区町村81.8万円3,566件

神奈川県の2市区町村(川崎市中原区・横浜市西区)は、㎡単価の平均・取引件数の平均のどちらも東京都の18市区町村の平均を下回ります。ただし、この2市区町村自体は単価順位16位・17位に入っており、上位20という枠の中では東京都の下位の区(大田区・北区・武蔵野市など)と近い水準にあります。この比較はあくまで今回上位20に入った2市区町村どうしのもので、神奈川県全体の傾向を示すものではありません。

なぜ単価と総額の順位がずれるのか

総額の中央値は、単価と専有面積を掛け合わせた結果です。単価が同じでも、成約する部屋が広ければ総額は上がり、狭ければ総額は下がります。同じ市区町村の中でも、単身者やDINKS向けの部屋とファミリー向けの広い部屋とでは専有面積が大きく異なるため、その街でよく取引される部屋の広さの傾向によって、総額の中央値は単価だけでは説明できない形で動きます。

前の項で見た「中央値から逆算した目安の広さ」でいえば、単価順位が総額順位を大きく上回る豊島区・新宿区・大田区は、単身者やDINKS向けとみられるコンパクトな部屋の成約が多い可能性があります。逆に、総額順位が単価順位を大きく上回る武蔵野市・世田谷区・川崎市中原区は、ファミリー向けとみられる広めの部屋の成約が多い可能性があります。ここでいう「可能性がある」というのは、このデータが示すのはあくまで価格の中央値どうしの関係であって、個々の部屋の間取りや世帯構成そのものを示すデータではないためです。

平均から外れる例

上位20市区町村の中から、特に単価と総額の関係が対照的な例を挙げます。

豊島区は、㎡単価97.8万円で全国9位、取引件数5,860件と件数も十分にあります。総額の中央値は2,900万円で、これだけを見ると全国の中では目立たない水準に見えますが、単価では上位10に入っています。

大田区は、㎡単価80.0万円で上位20の最下位圏(18位)、総額の中央値は2,800万円・総額順位74位です。取引件数は11,401件と今回の上位20の中でもっとも多く、少数の特殊な取引に結果が左右されたものではありません。

武蔵野市は逆のパターンです。総額の中央値は4,800万円で全国6位に入る水準ですが、㎡単価は80.0万円で上位20のちょうど最後(20位)にとどまります。取引件数は1,567件で、上位20の中ではもっとも少ない件数です。

世田谷区も、総額の中央値4,900万円で全国5位に入る一方、㎡単価は88.3万円で13位です。取引件数は11,047件あり、こちらも件数の面では十分な裏付けがあります。

これらの例からは、「総額が高い街=単価も高い街」とは限らないこと、また「単価が高い街=総額でも目立つ街」とも限らないことが、実際の市区町村の数字として確認できます。

このデータで分からないこと

㎡単価と総額の中央値は、実際の成約価格から集計した数字ですが、次のことはこのデータからは分かりません。

  • 間取り・部屋タイプ: 1LDKなのかファミリー向けの3LDKなのかは、この集計には含まれていません。「目安の広さ」はあくまで2つの中央値からの逆算です。
  • 築年数: この記事の集計は築年帯を区切らず、中古マンション全体をまとめた中央値です。同じ市区町村でも築年数によって単価は変わります。
  • 駅からの距離・階数・向き: 同じ市区町村の中でも、駅からの距離や所在階、向きによって単価は変わりますが、この集計は市区町村単位までしか絞り込んでいません。
  • リフォーム・修繕の履歴: 内装の状態や大規模修繕の実施状況は、公開されている取引データには含まれていません。
  • 今後の値動き: このレポートは過去の実際の成約価格を集計したものであり、今後の価格がどう動くかを予測するものではありません。

自分の街の実際の成約価格を確認する

この記事の上位20は、全国570市区町村の中でも㎡単価が特に高い一部です。多くの人が知りたいのは、自分の住んでいる、あるいは売却を考えている市区町村の実際の価格です。

自分の条件に近い成約価格を確かめる
  1. 1お住まいの地域・都道府県を選ぶ
  2. 2市区町村を選ぶ
  3. 3築年数のおおよその範囲を選ぶ
  4. 4その条件に合う実際の成約価格を、件数つきで確認する

ウリドキナビでは、画面右下の相談窓口から、都道府県・市区町村・築年数を選ぶだけで、その条件に合う実際の成約価格を確認できます。物件種別(マンション・戸建て)を選ぶ必要はなく、両方の結果をまとめて確認できます。回答するのは推計モデルではなく、条件に合う実際の成約記録です。実際の成約価格を確認する のページからも、同じ内容を確認できます。

今回上位20に入った市区町村は、それぞれ個別の記事でも価格の推移を公開しています。たとえば港区の中古マンションや新宿区の中古マンション、武蔵野市の中古マンションのように、この記事で単価が高いことが分かった街ほど、個別の記事で年ごとの推移も確認しておくと、この記事だけでは分からない変化の方向がつかめます。

この記事のデータについて

項目内容
出典国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib) 不動産取引価格情報(XIT001)
対象期間国土交通省が公開している直近年分の成約データ(データ更新のたびに対象期間も延びます)
対象中古マンションの実際の成約価格(推計・予測は含まない)
集計単位市区町村 × 中古マンション全体(築年帯・専有面積は問わない)
母集団の下限同じ市区町村の取引が30件以上、かつ㎡単価の中央値が算出できること
対象市区町村数570市区町村(この条件を満たした市区町村のみ)
ランキングの範囲㎡単価(中央値)が高い順に上位20市区町村
代表値の出し方市区町村ごとの成約価格・㎡単価の中央値

このデータは実際の取引にもとづいて更新します。新しい年の成約が加わった際は、同じURLのまま数字を更新し、年ごとに新しいページを作ることはしません。ここで示した順位や数字は、条件を満たした570市区町村の中での相対的な位置であり、条件を満たさなかった市区町村(取引件数が30件未満の市区町村など)は含まれていません。

よくある質問

㎡単価が高い街と、総額が高い街はなぜ違うのですか
総額の中央値は、㎡単価と専有面積を掛け合わせた結果です。単価が同じでも、成約する部屋が広ければ総額は上がり、狭ければ総額は下がります。今回の集計では、単価が高くても総額では目立たない市区町村(豊島区など)と、総額は高くても単価では上位20の下位にとどまる市区町村(武蔵野市など)の両方が実際に確認できました。
このランキングにマンション名は出てきますか
出てきません。この記事は市区町村単位の中央値を比較したもので、個別のマンション名や物件の順位付けは行っていません。個別の物件の価格は、公開されている取引データの制約上、この記事の対象外です。
上位20市区町村がすべて東京都と神奈川県なのはなぜですか
取引件数が30件以上という条件を満たしたうえで、㎡単価の中央値が高い市区町村を並べた結果です。取引件数の条件を満たす市区町村は都市部に集中しやすく、そのうえで単価が高い市区町村を絞り込んだ結果、上位20が東京都・神奈川県に集中しています。
自分の街の㎡単価はどこで確認できますか
この記事の上位20に入っていない市区町村でも、条件を満たせば個別の記事で価格の推移を確認できます。また画面右下の相談窓口や成約価格を確認するページから、都道府県・市区町村・築年数を選んで実際の成約価格を確認できます。