「広い部屋は㎡単価が安くなる」というのは、不動産の話でよく聞く前提です。まとめ買いすれば単価が下がるのと同じ理屈で、専有面積が大きいほど1㎡あたりの価格は下がっていく、というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。中古マンションを探しているとき、狭い部屋の割高感や、広い部屋の「お得感」を漠然と感じたことがある人もいると思います。
このレポートでは、その前提を全国の実際の成約データで確かめます。使うのは国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib)が公開する不動産取引価格情報(XIT001)で、全国の中古マンションの成約を専有面積で4つの帯(〜40㎡・40-60㎡・60-80㎡・80㎡〜)に分け、それぞれの中央値と㎡単価を比べました。対象は同じ市区町村・同じ面積帯で30件以上の取引がある場合に限り、築年数は問わずすべての取引をまとめています。件数が足りない市区町村は、最初から集計に含めていません。
先に結論を書くと、総額は専有面積が大きいほど素直に高くなりますが、㎡単価は面積が大きいほど下がり続けるわけではありませんでした。もっとも㎡単価が安いのは中間の広さ(40-60㎡)で、そこより狭くても広くても㎡単価は上がります。「広い部屋ほど㎡単価が下がる」という単純な比例関係は、少なくとも全国の中央値を並べた今回の集計では確認できませんでした。推計や将来予測はしておらず、ここに並ぶのはすべて過去の実際の成約価格です。
面積帯ごとの中央値と㎡単価(全国・中古マンション)
まず全体を見てください。件数(対象市区町村数・取引件数)を必ず併記し、条件を満たさない市区町村は集計に含めていません。
| 専有面積帯 | 対象市区町村数 | 中央値(万円) | ㎡単価(円) | 取引件数(合計) |
|---|---|---|---|---|
| 〜40㎡ | 221 | 560 | 280,000 | 116,123 |
| 40-60㎡ | 339 | 1,100 | 218,181 | 103,068 |
| 60-80㎡ | 511 | 1,800 | 261,538 | 283,372 |
| 80㎡〜 | 465 | 2,600 | 294,117 | 136,282 |
中央値は560万円→1,100万円→1,800万円→2,600万円と、面積が広がるにつれてきれいに上がっています。専有面積が広くなれば総額も上がるのは、直感どおりの結果です。
一方で㎡単価の列を見ると、素直に下がり続けてはいません。もっとも安いのは40-60㎡の21万8,181円で、そこより狭い〜40㎡(28万円)も、そこより広い60-80㎡(26万1,538円)・80㎡〜(29万4,117円)も、40-60㎡より㎡単価が高くなっています。総額だけを見ていると気づきにくいこのズレを、次の見出しから詳しく見ていきます。
総額は面積に比例して上がるが、㎡単価はそうならない
80㎡〜の中央値(2,600万円)は〜40㎡の中央値(560万円)の約4.6倍です。専有面積そのものは40㎡未満の物件のだいたい2倍以上あるので、総額が面積の広がりに応じて(あるいはそれ以上に)上がっていくこと自体は自然な結果と言えます。広い部屋を買えば総額が高くなるのは当たり前で、驚きはありません。
ところが㎡単価だけを見ると、この約4.6倍という開きはまったく再現されません。もっとも高い80㎡〜(29万4,117円)ともっとも安い40-60㎡(21万8,181円)の差は約1.35倍にとどまります。つまり「専有面積が2倍近くになれば総額も2倍近くになるが、1㎡あたりの値段はその面積の広さにほぼ比例していない」というのが、今回のデータで見える実態です。総額の伸び方(4.6倍)と㎡単価の伸び方(最大でも1.35倍)には、はっきりとした差があります。
この差が生まれる理由の一つは単純な算数です。総額は「㎡単価 × 面積」で決まるので、面積そのものが2〜3倍に広がれば、㎡単価がほとんど変わらなくても総額は自然と2〜3倍に近づきます。㎡単価が「下がり続けない」からといって、広い部屋の総額が割高になっているとは限りません。この点は後の見出しでも触れます。
「広い部屋を買うほうが㎡単価の面でお得」という単純な前提でマンション選びをすると、今回のデータからは外れることになります。もっとも広い80㎡〜は、総額(2,600万円)がもっとも高いだけでなく、㎡単価(29万4,117円)も4つの帯の中でもっとも高いという結果でした。広さと割安さが両立しているわけではない、という点は覚えておいて損はないと思います。
もっとも㎡単価が安いのは40-60㎡、そこから外れるほど高くなる
㎡単価を安い順に並べ直すと、40-60㎡を底にした山型(U字型)になっていることが分かります。
| 順位 | 専有面積帯 | ㎡単価(円) | 40-60㎡との差 |
|---|---|---|---|
| 1 (もっとも安い) | 40-60㎡ | 218,181 | — |
| 2 | 60-80㎡ | 261,538 | 約1.20倍(+19.9%) |
| 3 | 〜40㎡ | 280,000 | 約1.28倍(+28.3%) |
| 4 (もっとも高い) | 80㎡〜 | 294,117 | 約1.35倍(+34.8%) |
もっとも狭い〜40㎡の帯は、もっとも広い80㎡〜に次いで2番目に㎡単価が高いという結果でした。狭い部屋ほど㎡単価が安いわけでもなく、広い部屋ほど㎡単価が安いわけでもありません。真ん中の40-60㎡がもっとも㎡単価が安く、そこから面積が離れる(狭くなる・広くなる)ほど㎡単価は上がっていく、という形になっています。
この山型は、単身向けの小さい部屋と、広めのファミリー向けの部屋の両方に、㎡単価を押し上げる何らかの要因があることを示しています。逆に40-60㎡や60-80㎡のような「もっとも一般的な広さ」は、㎡単価が相対的に落ち着いた水準に収まりやすい、とも読めます。ただしこれは今回の集計から読み取れる形の話であって、原因までは次の見出しで扱います。
なお、この山型は今回対象にした全国の中央値をならした形であり、47都道府県すべてで同じ形になっているかどうかは、この記事の集計だけでは分かりません。都道府県や市区町村ごとに専有面積帯別の集計を取れば、山の底の位置(もっとも㎡単価が安い面積帯)が地域によってずれている可能性もありますが、それは今回のレポートの範囲外です。
取引件数と対象市区町村数から見る、もっとも「普通」の広さ
㎡単価だけでなく、対象市区町村数と取引件数の合計にも面積帯ごとに違いがあります。60-80㎡は対象市区町村数511・取引件数の合計28万3,372件と、どちらも4つの帯の中で最大です。全国でもっとも多くの市区町村が条件(30件以上)を満たし、もっとも多くの取引が積み上がっているのが60-80㎡の帯だということになります。
対照的に、もっとも狭い〜40㎡の帯は対象市区町村数が221ともっとも少なく、40-60㎡(339)・80㎡〜(465)・60-80㎡(511)のいずれよりも少数です。取引件数の合計は11万6,123件で、4つの帯の中ではもっとも大きい60-80㎡の28万3,372件のおよそ4割にとどまります。
| 専有面積帯 | 対象市区町村数 | 取引件数(合計) |
|---|---|---|
| 〜40㎡ | 221 | 116,123 |
| 40-60㎡ | 339 | 103,068 |
| 60-80㎡ | 511 | 283,372 |
| 80㎡〜 | 465 | 136,282 |
条件を満たす市区町村の数が少ないということは、〜40㎡サイズの中古マンションが一定数(30件以上)成約している市区町村が、全国的には限られているということです。60-80㎡はほぼ逆で、全国の幅広い市区町村で30件以上の成約があり、もっとも「どこでも取引されている」広さだと言えます。80㎡〜も対象市区町村数465・取引件数13万6,282件と、60-80㎡に次いで広く取引されている帯です。
こうして見ると、60-80㎡と80㎡〜は「全国的によく取引されている広さ」でありながら、㎡単価では40-60㎡より高いという、一見すると矛盾するような結果になっています。取引の広がりの大きさと㎡単価の安さは、必ずしも同じ方向を向かないということです。
面積帯ごとの目安になる間取り
専有面積の帯だけを見てもイメージが湧きにくいので、一般的に使われる間取りの目安を参考までに書いておきます。〜40㎡はワンルーム・1K・1DKといった単身向けの間取りが中心、40-60㎡は1LDK・2LDKのコンパクトタイプ、60-80㎡は2LDK・3LDKのファミリータイプ、80㎡〜は3LDK・4LDKといった広めのファミリー向けが目安になることが多いとされています。この間取りの目安は一般的な不動産業界の慣行によるもので、今回の集計データそのものから導いたものではありません。あくまで面積帯をイメージしやすくするための参考情報として扱ってください。
こうして見ると、㎡単価がもっとも高い〜40㎡(単身向け)と80㎡〜(広めのファミリー向け)は、住む人の層としては対照的です。それでも㎡単価では同じように高くなっているという点が、今回のデータの興味深いところです。真ん中に位置する40-60㎡・60-80㎡のファミリー向けの主力ゾーンのほうが、㎡単価としては相対的に落ち着いているという形になっています。
なぜこの形になるのか、考えられる背景
ここまでの数字だけから、なぜ40-60㎡の㎡単価がもっとも安く、そこから離れるほど高くなるのかを断定することはできません。今回の集計には立地や築年数、間取り、建物のグレードといった情報が入っていないためです。そのうえで、考えられる背景をいくつか挙げておきます。
- 〜40㎡(単身・ワンルーム向け): 対象市区町村数が221ともっとも少なく、条件を満たすのは都市部を中心とした一部の市区町村に偏っている可能性があります。地価の高いエリアに集中しやすい広さだとすれば、㎡単価が高めに出ることと符合します。
- 40-60㎡(コンパクトタイプ): 対象市区町村数が339と〜40㎡より多く、都市部以外でも一定数取引されている広さです。もっとも幅広いエリアで取引される標準的なサイズの一つであれば、㎡単価が平均的な水準に落ち着きやすいと考えられます。
- 60-80㎡(ファミリータイプ): 対象市区町村数511・取引件数28万3,372件と、もっとも広範囲かつ大量に取引されている帯です。もっとも「普通」の広さでありながら㎡単価は40-60㎡より高く、この帯だけで単純に説明がつくものではありません。
- 80㎡〜(広めのファミリー・高級タイプ): もっとも㎡単価が高く、総額も突出して高い帯です。専有面積が大きい物件には、立地や築年数の面でグレードの高い物件が混ざりやすい可能性があります。
㎡単価だけで比べるときの注意点
物件を比較するとき、総額だけでなく㎡単価も参考にする人は多いと思います。今回の結果を踏まえると、専有面積が違う物件同士を㎡単価だけで比べると、判断を誤りやすい可能性があります。
たとえば〜40㎡の物件と40-60㎡の物件を㎡単価だけで比べると、〜40㎡のほうが㎡単価は約28.3%高く出ます。これだけを見て「〜40㎡は割高」と判断したくなりますが、今回のデータではその差が立地の違いによるものなのか、面積帯そのものの特性によるものなのかを区別できません。㎡単価はあくまで参考値の一つであり、同じ面積帯・同じエリア同士で比べるときにもっとも意味を持つ指標だと考えるのが妥当です。
このデータで分からないこと
面積帯ごとの中央値・㎡単価は、大づかみに傾向をつかむには役立ちますが、次のことは反映されていません。
- 築年数: 今回の集計は築年帯を問わず(築年帯を「すべて」とした条件)まとめています。面積帯によって新築に近い物件と築の古い物件の混ざり方が違う可能性がありますが、この記事の集計だけでは分かりません。
- 立地(都道府県・市区町村・駅からの距離): 同じ面積帯でも、都市部と郊外では水準がまったく違います。今回の集計は全国の市区町村をまとめた中央値です。
- 間取り・階数・向き・リフォームの履歴: 価格を左右する要素ですが、公開されている取引データには含まれていません。
- 土地の価格と建物の価格の内訳: マンションの場合は敷地権(共有持分)込みの成約価格で、内訳は分けていません。
- 対象条件を満たさなかった市区町村: 同じ面積帯で取引件数が30件に満たない市区町村は、集計に含まれていません。
これらの条件を踏まえたうえで、この記事の数字は「全国でならした大づかみな傾向」として読んでください。同じ面積帯の中でも、都市部か郊外か、築浅か築古かによって㎡単価は大きく変わります。この記事の㎡単価は、あくまで面積帯だけで区切ったときの全国的な傾向であって、個々の物件の適正価格を示すものではありません。
自分の街・自分の広さで確認する
全国の中央値から傾向はつかめても、自分が住んでいる(または売却を検討している)市区町村・専有面積に近い条件での実際の価格は、この記事だけでは分かりません。
- 1お住まいの地域・都道府県を選ぶ
- 2市区町村を選ぶ
- 3専有面積に近い広さを選ぶ
- 4その条件に合う実際の成約価格を、件数つきで確認する
ウリドキナビでは、画面右下の相談窓口から、都道府県・市区町村・広さ・築年数を選ぶだけで、その条件に合う実際の成約価格を確認できます。回答するのは推計モデルではなく、条件に合う実際の成約記録です。条件に合う取引が少ない場合は、その旨を明示したうえで参考値として示します。実際の成約価格を確認する のページからも、同じ内容を確認できます。
今回取り上げた市区町村単位の実際の価格推移は、記事としても確認できます。たとえば港区(東京都)、大阪市中央区(大阪府)、福岡市中央区(福岡県)、仙台市青葉区(宮城県)、松本市(長野県)では、それぞれの市区町村単位の中古マンション相場の記事があります。全国の中央値がそのまま自分の街に当てはまるとは限らないので、気になる市区町村があれば個別の記事も確認してみてください。都市部と郊外、政令指定都市の行政区どうしでも、専有面積が同じでも水準は大きく異なります。
この記事のデータについて
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | 国土交通省 不動産情報ライブラリ(reinfolib) 不動産取引価格情報(XIT001) |
| 対象 | 中古マンションの実際の成約価格(推計・予測は含まない) |
| 集計単位 | 専有面積帯(〜40㎡・40-60㎡・60-80㎡・80㎡〜) × 市区町村(築年帯は問わない) |
| 母集団の下限 | 同じ市区町村・同じ面積帯の取引が30件以上 |
| 対象市区町村数 | 〜40㎡: 221 / 40-60㎡: 339 / 60-80㎡: 511 / 80㎡〜: 465(帯ごとの数。同じ市区町村が複数の帯で条件を満たすこともあります) |
| 取引件数の合計 | 63万8,845件(4つの帯の合計) |
| 代表値の出し方 | 条件を満たした市区町村それぞれの中央値を求め、その中央値をさらに面積帯の中で並べた中央値(市区町村をまたぐ再集計はしていません) |
| 政令指定都市の扱い | 行政区ごとに集計し、1つの市として束ねた再集計はしていません |
このデータは実際の取引にもとづいて更新します。新しい年の成約が加わった際は、同じURLのまま数字を更新します。年ごとに新しいページを作ることはしません。ここで示した中央値や㎡単価は、特定の1戸の価格を保証するものではなく、条件を満たした市区町村を面積帯単位でならした代表値です。
